『学級指導の「足並みバイアス」を乗り越える』という本

『学級指導の「足並みバイアス」を乗り越える』という本を読みました。「足並みバイアス」とは読んで字のごとく足並みをそろえよう、みんなで同じことをしようという雰囲気のことです。

確かに、学校ではみんなと同じことをしよう、クラスの掲示物は揃えよう、行事などは去年と同じ流れにしよう等に流れがちですね。

なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか。私が考える理由は、「楽だから」です。シンプルな理由ですが、それだけ今の教育現場は仕事量が多いと感じています。

英語・プログラミング・一人一台のパソコン等、確かにこれからの時代に必要なものですが、その分教師の負担が増え続けています。増えることはあっても、減ることはあまりない気がします。

だからこそ、現状維持で良いものはそのままでも良しという空気になるのだと考えます。しかし、それでは本来であれば必要のないものも現状維持により残ったままの状態になるという問題が発生します。

その解決方法がわかりやすく書かれているのが本書になります。

今回は、本書を読んで私が特に共感したものについて3点に絞ってお伝えします。参考になれば幸いです。

1目的意識をもつ

この本を読んで、「目的」と「目標」の違いをはっきりと認識することができました。著者の言葉を以下に引用します。

では、「目的」と「目標」の違いとは一体何か。

目指すものと言う意味では、2つは同じです。目的は、最終的に実現しよう、成し遂げよう、到達しようとして目指すものです。最終ゴールが「目的」です。

一方目標は、さしあたって実現させたり、成し遂げたり、到達しようと目指すもの言います。目標には「目印」という意味があります。目的を達成するために通過点として設ける目印が「目標」です。

『学級指導の「足並みバイアス」を乗り越える』より

目的がなくフラフラする時間も大切です。そのことを前回のブログでも書きました。

『ゲンロン戦記』から感じたオフラインの必要性

しかし、教育のことを考える上では、目的を持つことはとても大切だと考えます。自分なりに教育のゴールを考えることで、何をするべきかが明確になります。そこで、目的を遂行するための目標をたてていきます。

学校教育でいうと学習指導要領が目標になるかと思います。私は、このGW期間に指導要領を読み、改めて普段の授業で何をすべきかがはっきりとした気がします。

目標がわかれば、その目標を達成するために手段を考えます。この先の教育でキーポイントとなるのは、一人一台のパソコンの活用ではないでしょうか。

それぞれの学校でパソコンの活用が始まっていますが、「手段の目的化」にならないように目的意識を常にもち続けることが必要だと考えます。

2授業中の時間差を乗り越える

授業中は、基本的には同じ課題を与え、子どもたちはだいたい同じ時間をかけて課題に取り組みます。全員一律のスピードで授業が進んでいく、これが授業の「足並みバイアス」としてあるのではないでしょうか。

全員同じスピードで進めなくても良いというのが著者の主張です。私が、なるほどなと思ったのは、「パーソナルテンポ」という言葉です。

「パーソナルテンポ」とは、活動を行う際に一人ひとりが心地良いと思うテンポのことです。

著者は、この「パーソナルテンポ」の研究を引用した上で以下のように述べています。

先に述べた「一定のスピード」に揃えさせる指導は、多くの子にとってストレスがかかっている状態であることも知っておく必要があるでしょう。もちろん、社会で生きる以上何らかのストレスがかかることは避けられないとも思いますし、生きていく上で過度なストレスが必要なことも十分承知しています。大切なのは、こうした研究内容を把握した上で、常にストレスフルにならないように教える側が配慮することだと考えています。

『学級指導の「足並みバイアス」を乗り越える』より

確かに、「パーソナルテンポ」の研究は今後の教育を考える上でとても重要なものになると考えます。教師はどうしても「パーソナルテンポ」が遅い子が気になってしまうと思います。

しかし、個人でテンポが違うということに気がつけば指導の仕方が変わるだろうと考えます。逆にテンポが早い子にも適切に対応する必要があるでしょう。

授業のなかで、様々なテンポに対応できるように柔軟な計画をたてることが必要になります。ここでも、一人一台のパソコンは役に立つと考えています。

3算数の改善法

算数の指導の効率化はとても難しいようです。理由は、算数は「積み上げ」型の教科だからだそうです。

「積み上げ」型とは、前に学習したことが次の学習に必ず出てくるということです。例えば、掛け算の筆算は掛け算だけでなく、足し算ができないと問題が解けません。

だから、足し算でつまづいてしまうと、先に進むのが辛くなってきます。そこで著者は、「話し合い中心」から「取得中心」の学習に変えていくべきだと述べています。

私は、子どもの頃算数が苦手だったので話し合いをしようとしても何も話せなかった記憶があります。話し合いでわかっていくよりも、まずは教科書の問題ができるようになる。

算数が苦手だった私にとっては非常に説得力があります。

最後に著者の言葉を引用したいと思います。

計算の仕組みや解き方のあれこれについて議論する学習に意味がないとは言いません。しかし、一層の圧縮・効率化が求められている状況の中、新学習指導要領でも「何ができるようになるか」を重視されている中においては、指導する我々が「絶対にここだけはできるようにしてあげたい」と指導の中心を吟味し、明確にする必要があると思うのです。

「話し合い中心」から「習得中心」に指導方法を切り替えていくことで、算数指導においても大きな効率化や定着度の上昇が期待できます。

『学級指導の「足並みバイアス」を乗り越える』より

以上が、本書を読んで私が特に共感した3点になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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