今日は、『街場の教育論』という本を読みました。内田樹さんの著書です。
教育の本なのですが、様々な角度から教育のことを論じていて読んでいて新たな気づきがたくさんありました。大学生に向けた講義形式のような形で進んでいくのでとても読みやすかったです。
その中で特に印象に残った3点をまとめてみます。参考になれば幸いです。
1教育の本質
それは教育の本質が「こことは違う場所、こことは違う時間の流れ、ここにいるのとは違う人たち」との回路を穿つことにあるからです。「外部」との通路を開くことだからです。勉強しているときには、子どもたちも一瞬、無人島という有限の空間に閉じ込められていることを忘れて、広い世界に繋がっているような開放感を覚える。(中略)「今ここにあるもの」とは違うものに繋がること。それが教育というものの一番重要な機能なのです。
『街場の教育論』より
今ここにあるものとは違うものと繋がること、これが教育の本質であると。抽象的な話ではありますが、とても大切なことであるなと考えました。
私は、教育の役割の一つとして、子どもが自分の力で生きていけるようにしていかなければならないと思っています。
なので、生活に必要な実践的な知識や技能を身につけること、将来に必要な思考力や判断力を育むことが大切だと思っています。
しかし、この文章を読んで、少し考えが変わりました。自分を他の世界に連れて行ってくれるようなことも教育のなかでは大事なのだと。
実践重視ではなく、学ぶことの面白さ、自分の知らない世界への追求そんなところでしょうか。確かに、様々な本を読むことで、いろいろな世界に行けたような気がします。
今はコロナで夏休みはほとんど外出ができませんでしたが、本を読むことでいろんな世界に行けたような気がして、ここ数年でも良い夏休みでした。
今後は、子どもたちと様々な世界に行けるように考えつつ指導していきたいと考えました。
2日本の教育に必要なもの
日本の教育プログラムに一番欠けているのは、この「他者とコラボレーション」する能力の涵養だと思います。今の日本教育の問題というのはもしかすると、ぜんぶがこの一つの点に集約されるのかもしれません。
『街場の教育論』より
他者とコラボレーションするにはまずは「自分が何をできないか」を知ることだそうです。自分のことをよく知り、できないことは他の他の人に任せることが大切だと。
自分を知るためにはメタ認知という視点があるとわかりやすいかと。メタ認知とは自分を俯瞰してみることです。
まずは、自分の仕事の中で得意なこと。得意ではないことをイメージしてみると良いかもしれません。例えば、私はアイデアを出す仕事や新しいことを考えたりすることは比較的得意です。
一方で、アイデアを実現できるように具現化したり、そのコストを計算し帳簿にまとめたりする仕事は苦手なのでできればあまりやりたくないです。
このようなイメージができると、自分の職場の中でも得意なことと苦手なことをうまく配分してよりよく仕事ができるのではないかと考えます。
今後の教育(特に大学教育)は、このような他者とコラボレートする能力を身に着けていくことが必要になってくるのではないかと思います。
3グローバル資本主義と教育
改めて私たちの直面している問題を定式化すると、もう一度さきほど述べたことを繰り返すことになりますが、それは、「グローバル資本主義が私たちに要請する生き方をどうやって学校の外に押し戻すか」ということに集約されるだろうと思います。
『街場の教育論』より
私が最近読んだ本の中では、グローバル資本主義がもたらしたものとして、「個人の自由化」「自己責任論」「格差の拡大」などがあると書いてありました。(うろ覚えの部分もあるので間違えていたらすみません)
確かに私も、資本主義の恩恵を受けて育ってきました。自由にモノを買って資本主義にも貢献してきました。しかし、このコロナ禍や不況の中で限界が来ているのかもしれません。
そのような資本主義の考えを教育にもってくるのがどうなのかと言うのが筆者の考えです。資本主義でもっとも教育と関係があるのが「競争原理」でしょうか。
競争することは、私は別になんとも思っていませんでしたが、最近はどうなのかなと思うようになりました。この本にも書いてあるように、競争を煽っていくと自分が上に立つために相手を蹴落とすというという考えになってきます。
最近ではオリンピックもありました。健全なプロとしての競争はいいのかもしれないですが、教育に競争を持ち込むのはできない子を置いていき、できる子も必ずしも幸せにはなれないと思います。
学びの本質をもう一度考えていきたいなと本書を読んで切に感じました。
以上が、『街場の教育論』を読んでの感想になります。最後までお読みいただきありがとうございました。