今回紹介する本は、「NHKの100分de名著『資本論』」です。本書から、働き方を考えたいと思います。
著者である斎藤さんは、最近では『人新世の資本論』という本が大ベストセラーになっていて有名な方です。『人新世の資本論』は以前ブログでも書いたのでよろしければお読みください。
参考になれば幸いです。
1テイラー主義とブルシット・ジョブ
まずは、テイラー主義に対してまとめてみます。テイラー主義とは、生産工程を細分化して効率化を図るやり方だそうです。分業を徹底することで、単純作業になり作業効率も上がります。
しかし、労働者はこの仕事は何のためにやっているのかがわからなくなり、資本家が優位な立場になります。資本家と労働者の立場について、いかに引用します。
テイラーは、マネジメントの概念を確立した。科学的管理法の父とも称されますが、テイラー主義は、生産に関する知というコモン(共有財産)を囲い込む行為にほかなりません。生産に関する知を資本が独占し、資本の都合で再構築された生産システムに、労働者を強制的に従わせる。すると、労働者の立場はどんどん弱くなり、そうなれば、労働時間も容易に延長されてしまいます。
「NHKの100分de名著『資本論』」より
テイラー主義が進むと、仕事自体の価値が下がっていくと考えます。やはり単純作業はやっていても楽しくないからです。
著者も例に挙げていますが、ウーバーイーツなどの単純な宅配業務は、ルートを考える面白さはあるかもしれません。しかし、そこにコミュニケーションや創造性はないのかなと思います。
ただ、配達業務は必要な仕事なのでなくならないと思いますが、AIが発達したらどうなるのでしょうか。最近、「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」という言葉をよく聞きます。
介護や医療などのエッセンシャルワーカーと比べて、謎のコンサルや広告業務などの方が給料が高いという事実があります。
やはり大切なのは、労働の内容を充実させることだと思います。私の今の教員という職業は、非常に創造的でやりがいのある仕事です。
その一方で、「やりがい搾取」という言葉があるように、子どものためといって長時間労働や残業代なしの残業が当たり前の価値観になっています。
国や政治で労働環境が変わっていく可能性もありますが、それだけに期待しても変わらない可能性もあります。なので、労働に関しては仕事に振り回されないように、自分で考えて調整していく必要があります。
自分の仕事の中でも「エッセンシャル・ワーク」と「ブルシット・ジョブ」があると思います。大切なのは、早い段階でそれらを見分け、優先順位をつけていくことです。
これだけで、労働時間は大幅に改善されると考えます。
2コモンの復活
著者は、資本主義の限界を訴え、それに変わる新たな価値観を提案しています。その部分を以下に引用します。
マルクスがポスト資本主義として構想した将来社会は、コモンを基礎とした豊かな社会です。ここでいう豊かさとは、もちろん単なる物質的な豊かさではありません。
マルクスが目指した豊かさは、個人資産の額やGDPで計れるようなものではありません。GDPだけを重視する経済から脱却して、人間と自然を重視し、人々の必要を満たす規模を定常するという意味で、私はこれを「脱成長」型経済と呼んでいます。
「NHKの100分de名著『資本論』」より
友達の引っ越しを手伝うという助け合いもコモンのひとつの要素だそうです。対価を求めない「贈与」のシステムですかね。「贈与」に関しては以前記事に書いたのでよろしければお読みください。
これを実現するのは難しいなと正直思います。ただ、今の資本主義に全振りしている感じから多少シフトしていくのは可能だと思います。やはりバランスが大切で、SDGsも正直ファッション的だなとも思っていましたが、多少は意味があるかなと最近は思ってきました。
ただ、今私は投資もしており、資本主義社会の恩恵に与っている身なので急には考え方を変えることは難しいです。しかし、今後はコモンを重視する社会になれば良いと感じております。
以上が、「NHKの100分de名著『資本論』」から見る働き方の今後になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。