今回は、『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』という本を読んでの感想です。内田樹さんという方の本になります。内田さんの本に関しては以前ブログに書いていますのでよかったら読んでみてください。
内田さんの文章は非常に読みやすく、面白いです。本書は、内田さんだけではなく以前ブログでも紹介した斉藤幸平さんなど様々な方からのメッセージがまとめられています。
特に私が一番良かったのと思ったのは、内田さんの文章です。
内田さんの文章のテーマは、「ポストコロナ期における雇用について」です。その文章に中に出てくるのが「ベーシックインカム」です。名前は聞いたことがある方が多いのではないかと思います。
本書の該当箇所を以下に引用します。
ベーシックインカム(basic income)というのは「最低限所得保障」のことです。政府がすべての国民に対して、健康で文化的な最低限度の生活を送るのに必要な現金を支給する制度です。いま、だいたいどこの国でも、生活困窮者に対しては、生活保護、失業保険、医療扶助、育児支援などいろいろな現金支給がありますけれど、ベーシックインカムがそれらと違うのは、こういうさまざまな既存の社会福祉制度をほぼ全廃して、全国民に等しく最低限度の生活に必要な額を支給する点です。すごくシンプルな仕組みなんです。
『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』より
ポイントは、「全ての国民に対して」というところですかね。一方で、条件を満たした人に支給する生活保護の受給の条件を今見てみましたが、なかなかハードルが高そうです。
何の手続きもなくて、毎月決まった額の現金が支給されるなんて最高ですよね。ただ、当たり前ですが実現するのはかなり難しいでしょう。例えば、財源ですよね。一体どこから出すのか。自国で紙幣を印刷しているので、経済破綻することはないのかなとは思っていますがどうなのでしょう。
MMTでしたっけ。現代貨幣理論。概要について以下に引用してみます。
現代貨幣理論とは名前の通り貨幣や金融の仕組みを理解し、それを基に経済政策の分析などを行う理論です。英語表記の「Modern Monetary Theory」の略称で「MMT」ともいい、「現代金融理論」と呼ぶ場合もあります。
現代貨幣理論の代表的な主張をまとめると、以下の3つのことがあげられます。
・自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
・財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべき
・税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みである
https://miraisozo.mizuhobank.co.jp/money/80284
もう一つの問題が、最低限の生活が保障されているので、働くなってしまう人が増えるのではないかという懸念があります。これに関しては、確かにそうだなと思います。
本書でも、イギリスの「揺り籠から墓場まで」政策で「アンダークラス」という社会階級が生まれたそうです。内田さんは、作家のブレイディみかこさんの話しを例としてあげています。
ベーシックインカムを進めていくとこのような社会問題が起こることを想定していかなければいけません。しかし、内田さんは、このベーシックインカムの制度が「ランティエ」復活のきっかけになるのではないかと考えているそうです。
ランティエとは「年金生活者」のことだそうです。17世紀ごろのヨーロッパでは、このランティエたちが芸術や化学のイノベーションの担い手になったそうです。お金はあるし暇もある。それがイノベーションのきっかけになるそうです。その部分について以下に引用します。
イノベーションのきっかけなんて、ほんとにちょっとした「余裕」なんですから。いまだって、勤め人がみんなきちんと週休3日とれるようなゆるい勤務シフトだったら、日本の文化的発信力は一気に桁外れのものになります。これは保証します。日本人は働きすぎです。無駄な仕事をしすぎです。いまの半分で十分です。人間、暇じゃないとクリエイティブなことはできません。
『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』より
著者の内田さんは、暇があれば文化的な発信力が桁外れになると述べています。確かに、私も勤務時間を短くし、その分本を読んだり、趣味の時間に使ったりして充実した時間になっているのでこの意見には同意します。
余白というか余裕はとても大切だなとこの一年で改めて気づきました。自己研鑽に励むことで日々の仕事にも生きる。今年一年は非常に良いサイクルを回すことができたなと今振り返ると実感します。
少し話はそれましたが、ベーシックインカム導入にはさまざまな課題はありますが、いまの日本の余裕がない労働観を打破するチャンスでもあるかなと思います。
以上が、『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』とベーシックインカムについてになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。